善意と偽善のはざまで

次の用事まで1時間あった。ふと目に入った銀座の有名店ナイルレストラン。とっさに駆け込んで遅いランチをすることにした。ほにゃららランチ?と聞かれて、よくわからなかったけど、はいと答えてすぐにカレーが運ばれてきた。目の前で店員が器用に鶏肉の骨を外してくれる。美味しい!なるほど、これがナイルレストラン。確かにスパイシーで美味しい。

後から入ってきたどう見ても日本人の寝癖だらけのお兄さんは、どうやらお店の人と知り合いみたい。そして、なんと10分もの間、ライスとカレーと鶏肉とトッピングのマッシュポテトとキャベツをぐちゃぐちゃに混ぜていた。とても嬉しそうに微笑みながら。むむ。この人、インドを知ってる。私もできることならインドでインド人と食べたみたいに、手でぐちゃぐちゃにしながら食べたい。

さすがにお兄さんもスプーンで食べていたけど、本当に嬉しそうに美味しそうに食べてた。ふと店内を見渡してみると、嬉しそうにカレーの写真を撮ってるお兄さん、楽しそうに食べてる家族らしき3人組、笑顔のカップル、みんな楽しそう。美味しいものは人を笑顔にするなぁ。

ひっきりなしにかかってくる電話は、店は何時まで空いているのかという問い合わせらしい。その都度、カレーが売り切れたら閉める、年内は今日までと説明するオーナー。大抵はすぐには納得しないらしく、その時間は絶対売り切れてるとか、その時間は微妙だとか、オーナーは何度も説明してる。ナイルレストランの味が恋しくなる人が多いのだろう。その内の一人は、お得意さんらしく、それならとテイクアウトで色々取り置きしてもらうことになったらしい。あれこれたくさん注文してる。なんだ、ほにゃららランチ以外にも色々あるんだ。

私はというと、ほにゃららランチは量がとても多くて食べきれなかったけど、オリジナルのガラムマサラも自宅用に買って、とても満足した気持ちで次の仕事に向かった。

向かう途中、ふと、道端に座ってるおじさんと目が合った。おじさんは顔も服も手も真っ黒に汚れていて、目だけがやけに光ってた。ハイヒールでかつかつと通り過ぎながら、どうしてもおじさんが気になって、自動販売機で温かい飲み物を買って引き返した。

差し出したけどおじさんは受け取らない。服も体も何もかも真っ黒に汚れたおじさんだって誇りがあるのだ。 「もうすぐお正月だから」と私は訳のわからないことを口走って、頑として受け取らないおじさんの脇に置いてきた。

インドのことを思い出しながらお腹いっぱい1500円の美味しいインドカレーを食べて、幸せそうに食べる人を見てまた幸せな気持ちになって、意気揚々と仕事に向かう私。そして、そこにいたおじさん。私はおじさんのことを勝手にかわいそうだと思ったのだろうか。良いことをした気になっているのだろうか。尊敬しているあの人ならどうしただろうか・・・

いや違う。私はおじさんに温かいものを飲んで欲しかっただけだ。おじさんがたとえ寒くてお腹が空いていたとしても、受け取れない何かが色々あるのだ。おじさんにもおじさんの事情があるのだ。

たとえ、嫌われても、怒られても、私は自分が信じていることをするだけ。相手が必要としていることは何かを見極めて、それを全力で差し出す。なーんだ、普段していることと、おじさんにしたことは何も変わらないじゃない。おじさんがしたことだって、普段みんなにしていること。お互いが歩み寄れていないから、分かり合えていない何かがあるだけだ。

帰りにもう一度通ってみたら、缶のお汁粉はなくなっていた。おじさん、あったかいうちに飲んでくれたかな。

 

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